歯科技工士の人材減少と高齢化は、もはや「これから来る危機」ではなく進行中の現実です。就業歯科技工士数はこの10年で減少を続け、現場の年齢構成も大きく偏っています。

厚生労働省の統計によると、就業歯科技工士数は2012年末の34,613人から2022年には32,942人へと減少しました。平均年齢は49.3歳で、50代以上が全体の半数を超えています。20〜30歳未満の若手層では離職率が高い傾向も指摘されており、給与・待遇への不満や将来への不安が理由として挙げられています。

労働時間の面でも厳しさが表れています。日本歯科技工士会がまとめた2021年の実態調査報告書では、勤務している技工士の週労働時間(残業込み)は52.3時間、自ら技工所を営む自営技工士では66.3時間にのぼりました。一般的な週40時間労働と比べると、その差は歴然です。

就業歯科技工士数の推移(2012年・2022年)2012年末34,613人から2022年32,942人へ、10年間で約1,671人減少。34,613人32,942人2012年末2022年
図: 就業歯科技工士数は10年間で約1,671人(約4.8%)減少(厚生労働省統計)。
49.3歳就業技工士の平均年齢
31,733人令和6年の業務従事者数(免許登録者125,093人中)
52.3h / 66.3h週労働時間(勤務技工士 / 自営技工士)

この免許登録者数と業務従事者数の比率(25.4%)は「歯科技工士の担い手不足」を示す数字としてよく引用されますが、読み方には注意が必要です。

注釈:25.4%という数字の読み方について

確認できた事実 ― 歯科技工士の名簿登録は、運転免許のような更新制度がありません。歯科技工士法施行令第4条第2項は「歯科技工士が死亡し、又は失そうの宣告を受けたときは、戸籍法による死亡又は失そうの届出義務者は、三十日以内に、名簿の登録の消除を申請しなければならない」と定めています。つまり本人の死亡後も、遺族など届出義務者が抹消を申請しない限り、名簿上の登録は自動的には消えません。

ここからは推測 ― 歯科技工士法は1955年(昭和30年)制定と70年近い歴史があり、初期に登録した世代はすでに寿命を迎えている方も多いはずです。届出主義かつ罰則も強くない仕組みである以上、遺族が抹消手続きを行わないまま名簿に残っているケース(いわゆる「未整理登録」)が一定数含まれている可能性は高いと考えられます。ただし、その具体的な人数や割合を示す公式統計・調査は見当たりませんでした。したがって「免許登録者125,093人のうち実働は31,733人=4人に3人が離職」と字面どおりに受け取るのではなく、実際の現場離れの規模を見るには、上の図(就業者数の実数推移)や年齢構成のほうが信頼度の高い指標といえます。

ここがポイント
  • 就業者数は10年で約1,700人減、平均年齢49.3歳と高齢化が進行。
  • 免許登録者125,093人に対し業務従事者は31,733人(25.4%)だが、名簿には抹消手続き未了の登録が相当数紛れている可能性があり、実際の離職率とイコールではない。
  • 長時間労働の実態が、若手の定着を妨げる一因になっている可能性。
  • ベースアップ支援料やCAD/CAM化は、この構造的課題への対症療法という位置づけ。
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